2015年7月11日土曜日

制御できないものを使うアート

美術館前にて
別の用事で桜木町へいくことがありましたので,本日より開催されている,横浜美術館の企画展に行ってきました.

蔡國強展:帰去来|横浜美術館

 もちろん,横浜美術館協力会に参加しているので,無料です.

 展示されている作品数は少ないのですが,今回横浜美術館にて製作された大判の作品もあり,それなりに見ごたえがある展覧会でした.

 私のお勧めは,ホールに展示されている,行けば見ることができる,「夜桜」,そして,オオカミのぬいぐるみ(?)で作られている「壁撞き」です.
 夜桜は超大判の作品です.
作品の大きさがわかります
作品の前に立つと,その大きさに圧倒されます.
 退いて見て,水墨画のような桜の絵の繊細さに打たれ,近くに寄って見て,その火薬で焼き付けられた跡に驚く,そんな作品です.
 会場内で上映されているビデオ作品にて,御本人が御自身の作品を,「制御できない,偶然性を使ったアートだ」なる旨の発言をされていますが,十分計算された作品に見えます,そして細部に偶然性が宿っている,そんな風に感じました.
 この作品は撮影が許可されているのですが,カメラのファインダー越しに映った桜の繊細さにどきりとしました.

 壁撞きですが,99体のぬいぐるみ(とはいってもとてもよくできている)のオオカミがガラスの壁に向かって突進しているさまを作った作品です.
 まず,99体のオオカミに圧倒.
 なぜガラスの壁なのか,どうして壁に突進しているのか,オオカミを使ったのはどうしてなのか,
それらが解説を読んですべてわかりました.
 意味もさておき,そのダイナミックな作品に圧倒されます.
 99対のオオカミはひとつとして同じものはなく,それぞれが生き生きとした動きを見せます.
 もっとも伸びているもの,壁にぶつかって一番「ムギュ」となっているもの,なぜか私と目が合うものがいました.
 かがんだり,目の高さにいるもののそばに行ったりして,自分も壁に体当たりするオオカミの一頭になったつもりで作品を鑑賞するのも面白いと思います.
 さすがに,四つんばいまでにはなりませんでしたが,屈んでガラスの壁のほうを見ると,多数の仲間と共に,変えるのが難しい「壁」に向かっていく仲間意識のようなものを感じました.
 オオカミさんはオスメスまで作りこんであるのですが,それぞれ何体も顔を覗き込んでみましたが,性別と表情の差は見られませんでした.
 作者に会ったら,オスメスの比率に何か意味はあるのか聞いてみたいところです.

 上映時間が短いので,2本のビデオ作品もしっかり鑑賞することをお勧めします.
 蔡國強:帰去来では,作者が生きている意味について話す件があるのですが,なぜか感動してしまいました.

 作品数が少ないので,ささっと見終えることができますが,不思議と心に残るものがありますので,作品一つ一つをじっくりと鑑賞することをお勧めします.
 
 なお,コレクション展に,この展覧会名である,「帰去来」の大本になった陶淵明の詩に基づいた彫刻も展示されていますので,こちらもあわせて.
 帰去来ー陶淵明

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